1月24日付の、朝日新聞天声人語。
以下、引用です。
日本車の名前は数あれど、マニアが語り明かせる名跡となるとそうはない。
その一つがスカイラインだ。
7代目までの開発に携わり、あまたの伝説を残した桜井真一郎さんが亡くなった。
出身のプリンス自動車には、ゼロ戦などを手がけた男たちが集い
1957年の初代スカイラインは「飛行機屋が凝った作品」と評された。
代々に脈打つスポーツ魂は、桜井さんが足回りを任された2代目からで
もっぱらサーキットで培われた。
初代より小さな車でレースに挑むにあたって
桜井さんは上級車種の大型エンジンを積むべく
量産型の車体を20センチ伸ばす奇策に出る。
かくて生まれた2000GT、通称スカGはイメージを決定づけた。
日産に吸収合併されても、技能集団の遺伝子は3代目に引き継がれた。
中でもレースを意識した「GTR」は国内無敵の走りを誇り、今も日産の看板だ。
4代目は排ガス対策などで重くなったが、「ケンとメリー」の粋な宣伝でよく売れた。
販売戦略から、桜井さんは「スカイラインの父」にされた。
本人は職人の頭領を自称し、「伝える手段は図面のみ」
と、鉛筆の線がきれいに引けるまで新人をしごいたという。
それでもオヤジさんと慕われ、桜井学校からは逸材が輩出した。
「やれるだけやって、車づくりに心血を注いだ満足感を持って死にたい」
享年81。言葉通りの、うらやましい開発人生である。
ケンメリのCM曲でも聴き直し、天に駆け上る丸型テールランプを見送りたい。
この耐久財が夢や憧れでありえた時代が、また遠くなる。
ほほう……
天に駆け上る丸型テールランプ
うーん。
天に駆け上る丸型テールランプ
若干の臭みをはらみつつ、ズシっと伝わる
無視のできないこの、フレーズの使い方、その語り口。
天声人語は、何人かの担当が日替わりで執筆していると聞きますが
以前、たちごけ人生に取り上げた
「胃の形が分かるほどにじわっと広がる熱燗」
の、担当の方と同一人物と見ましたが、いかがなものでしょう。