2014年 06月 03日

やっぱ、ごめんブロンコ…ようこそWR250R

先々週、エンジンが焼き付いて停止したブロンコ。

当面の通勤車両に困って
ご近所に声をかけてみたら
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ぐふふ。

活きの良いランツァを借りることができました。
ランツァといえば、97デビューの2ストトレールで
ボクがバイクに興味を持って、なんとなく初めて買った
ガルルだかバックオフだかに華々しく紹介されていて
当時憧れながらも、しがない芸大生に
新車など購入できるわけもなく
現実路線として中古のジェベル200を買った覚えがあります。

しかし、いま…

あの、かつての高嶺の花
憧れのランちゃんが、今
ボクの股の下に!


ランツァといえば
コンパクトでハイパワーが売りでしたが
じつは案外ポッチャリさんで
クビレが無い、残念な部分も特徴でしたが

この子は、ダイエットもバッチリきいて
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YZの外装ですっきりスリム。

燃料タンクの小型化にともなって
ボクの通勤距離とこのマシンの燃費も相まって
毎日給油の面倒も
この、痛快の2文字に尽きるエンジンフィールに
何でも許せそうな気になってきます。

いつもの通勤ダートも
もちろん快調。
ブロンコの比ではないアベレージ速度で駆け抜けることができます。
そう長くはないダート直線区間でも
GPS記録によると
軽く3桁キロに到達してしまいます。
ブロンコだと、辛くも到達できなかったというのに。

もちろん、ブロンコは
速く走ることに主眼を置いたバイクではありませんし
ムキになって飛ばしても
怖いだけで楽しくないので
つまりはランツァとは、キャラクターがキッチリ違います。

まあ、しかし
高性能(てほどでもないけど)なバイクは
やっぱり気持ちがいいもんだなあ…

いっそ、ブロンコの代わりに
ランツァを買ってしまってもいいかもしれない…
そんな気にさえ、なってきました。



さて、そんなブロンコ。
ウチでバラしてみたところ
シリンダーとピストンは焼き付いていないと判断。
どうやら、クランクベアリングあたりがダメっぽいと
素人判断をくだしたものの
タンデムにもって行って
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大将に見てもらったところ
秒殺で

「シリンダー、焼き付いとるじゃないか」

と言われ撃沈…

もっとエグいのを焼き付きだと思っていたので
へえ、こんなんでもダメなんだあ、と
勉強になりました。

ついでに、クランクのほうは
やっぱりベアリングが逝っていて
ヘッドも燃えカスがモリモリで
つまり、エンジンはケース以外は
どこもかしこもダメ、という事が判明しました。




知人すじから
セローのエンジンを譲っていただけそうな話もあり
そのエンジンを整備して
ブロンコのエンジンのギアボックスやクラッチ板(比較的新しい)を移植して
2個イチにしてやれば
金銭的には、最小限で済みそうです。

何やかんやで、手間と時間がかかりそうな予感はプンプンしますが
気に入っているブロンコだし
そうやって乗り続けよう。



大将「いっそ、新しいバイクに買い替えたらどうだ?」
たち「またまたあ…」
大将「通勤だからこそ、良いバイクに乗ったほうがいいぞ」
たち「まあ、それはもちろん、わかってますけど…」
大将「そこの白いWRなんか、どうだ?」
たち「え? WRですか」
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正直、WRは考えてなかったなあ…

ルックスはわかりやすくカッコいいとは思うけど
そういうのより
ブロンコみたいにキュートでレトロな
ちょっと油断させるルックスで
実はオフもボチボチ走れちゃいます、という意外性みたいなところに
面白みを感じていたし
以前、ヤブさんがWRを持っていて
何度かコースや公道で乗せてもらいましたが
なんかシックリこなくて、CRF150やDRZ400のダイレクト感に比べると
薄味だなあ、と敬遠していました。
たしかに、よく走るエンジンだし
良いサスペンションだけど
なんか、重いし疾走感が無くて、ただ速い、みたいな。

そして何より、高価。
70万円以上する250ccトレールって!



まあ、しかし
せっかく店先にあるWRだし
ナンバーも自賠責もついたキレイな中古車なので
とりあえずヘルメットを借りて試乗してみることにしました。

珍しい、ほぼ、どノーマルの中古車です。



スラッと手足の長い、日本人離れしたスタイル。
白く艶やかな肌。
きゅっとした小顔。

ああ、いかにも今時の子って感じだなあ…

ブロンコやランツァを思い出して
つい比較してしまいます。


綺麗な外観とは対照的に走行距離だけは
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まあまあ行ってます。
20代半ばですか…オンナ盛りですね。


久しぶりにまたがるWRは
やはり大柄に感じましたが
KTM250SXFと似たようなものです。
重量はそれなりにありますが、ランツァやブロンコと比べて
そんなに重いとは思いません。

高浜の街中から海に向かって
のんびり試乗。

ボチボチ混雑した、土曜日の午後。
クルマも多く、頻繁な信号待ちと暑い太陽。

そんな中、WRと対話を深めて行くうちに
ボクはすこしずつ
彼女に心が傾いていく自分に気がついたのでした。





(以下、試乗インプレッション)
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※長いです。また、あくまで個人の感想です。





「ずいぶんと静かなんですね」
「静かなバイクはお嫌い?」
「いいえ。うるさいバイクは大嫌いです」

ボクは正直に答えた。実際、WRはとても静かなバイクで
体感的には、そう…
レクサスLSとダイソンの掃除機の中間くらいのボリューム感といえばわかりやすいか。

しかし、彼女は静かでいながら
歯切れの良い鼓動がある。

「そう、良かった。そうじゃない男の人が多いから」
「ああ。たしかに、年配の人とかそうですよね」
「あなたも、アタシを買ったらマフラーを換えるのかしら」
「…買わないですよ」
「仮の話よ」

彼女のスッキリとしたうなじを眺めながら
少し考えて、丁寧に答えた。

「換えないと思いますよ、すくなくとも公道では」
「そう」
「それにお金もないしね…」
「店長に聞いたわよ。あなた、年末にバイクを盗られたそうね」
「それに夏には二人目の子供も産まれるしね」
「……」

信号が青になって
それでしばらく会話がとぎれた。

ボクが住む山あいの街と違って
このあたりは海が近い。
夏っぽい匂いだなあ、と思いながら
彼女の静かな鼓動を感じていると
今度は彼女の方から話をふってきた。

「あなた、小柄だけどアタシみたいなフルサイズも乗れるのね」
「悪路はともかく、ですが。前にDRZ400にも乗ってたしね」
「そのDRZとは、どうして別れちゃったの?」

若い子にありがちな、無遠慮な質問だな、と苦笑しながら
DRZのことを思い出す。

…そういえば、どうして別れてしまったんだろう。
嫌いになったわけでもないし、ほかに好きなバイクができたでもないし。

「まあ、いろいろとあったんですよ」
「ごめんなさい、変なこと聞いちゃって」
「いえ、いいんです」

それからしばらく、ボクのバイク歴について
簡単に紹介した。
彼女はなかなか聞き上手で、ときおり相づちを打ったり
質問を挟んだり、時にはおおげさに驚いてみせたり
とくに、さっき話題に出たDRZと行ったモンゴル高原の話や
BETAと過ごしたスコットランドの日々について
彼女はとても興味深そうに聞いてくれた。

「あなた、見た目によらず遊んでるのね」
「キミこそ、まだ若いのに2万7千キロだなんて、遊んでるじゃないですか」
「アタシの距離のことはいいのよ」
「これは失礼しました」
「いいのよ」

そう言うと、彼女は遠い目をした。




「アタシ、みんなから”重いオンナ”だと思われているのよ」

寂しそうに、そうつぶやいた。
……

WR250R
たしかに、いかにも存在が”重い”。


”オフロードのR1”を標榜してヤマハが総力をあげて開発し
2007年、華々しくデビューした。
高速道路から日常ユースまで幅広い使用シーンに対応し
林道はもちろん、レースでも戦える才能を与えられ
なんとISDEも、戦った。

モデルのような容姿で、お茶もお華も心得があり
家事も料理もサラリとこなし、学業優秀
一方、剣は北辰一刀流、槍は宝蔵院流
名門ヤマハ家が手塩に育てた娘、それがWR250R。

同門には、剣と槍だけを専門にやっていればいい
WR250F姉さんやYZ250F姉さんを持ち
そんな中で育った彼女は、さぞや複雑な心境だったろう。

そりゃあ、世間一般の男性からしたら
たしかに、”重い”



「ボクはキミを、そう重いとは思いませんよ」
「ありがとう、お世辞でも嬉しいわ」
「いやいや、本心ですよ」

実際、DRZ400より軽いし、セロー姉さんと比べても
たしかカタログ値で2kgほどの差しか無かったはずだ。
後で知ったんだけれど、剣と槍だけのWR450姉と比べても8kg増。

同じ250トレールのホンダCRF250Lが11kgも重いことを考えると
彼女は十分スリムで軽量だ。

お山やCGCにでも持ち込まないかぎり
WR250Rが重いなんてことはないだろう。
もし、お山やCGCに行くのなら、ボクはBETAを使うだろうから
ボクにとって、132kgの車重は問題ではない。
同じ理由で車格が大きいことも、問題とは思わない。

そう伝えると、彼女は素直に喜んだ。


「世の中、あなたみたいな人ばっかりならいいけど、アタシ、男運なくて」
「唐突になんですか」
「”お茶とお華と剣と槍”みたいな看板のせいかしら」
「うーん。どうだろう」

たしかに、彼女はそこはかとなく幸薄い。
美人なのに、幸薄い。

華々しくデビューしたがゆえに
なんか客層がオタクっぽいというか
例えば今はもう廃盤のXR250なんかは
今でもコアでタフなオフローダーたちから熱い支持を得ているのとは
対照的だ。

すばらしいスペックを持つ割に
ボクの身の回りにはWRのことを良く言う人が
あまりいない。
みんな、ちょっと乗っては
「いいバイクだ」
と口をそろえて言うけれど、なんかお愛想っぽい。
そして、別のバイクを選んでいく。

フリーライドマガジンの三上編集長くらいのもんなんじゃないか
ボクの周りでこのマシンを気に入ってレースで使い倒したのって。

あくまで偏見だけど、ときどき見かけるこのバイクって
いつもピカピカで、ツーリングでちょっと林道や河川敷にきて
ちょっとだけ走ってゼハゼハ言ってる腹の出た中年が
夜、ニヤついた顔でマフラー換えたり
オタクっぽくエア・インダクション・システムに
手を入れたりしてグヘグヘ言ってて
レースに来ると、なぜかいつも初心者クラスにエントリーして
トコトコ走ってる……

……偏見すぎますね。すんません。



まあ、でもまあたしかに
彼女はキャラクターのせいでずいぶん損をしているような気もします。




しばらく走るうちに
いくらか彼女と打ち解けてきた。

スルスルと回るエンジン
鼓動が速くなる。
速度感も加速感も、やはり穏やかだ。
でも、メーターを見ると、想像以上に出てる。
体幹がしっかりしてるのと、脚が良いんだということがわかる。

しばらく、その張りがあってしなやかな脚を
強く、弱く、押したりしながら、弾力やしっとりとした反発を堪能する。
うん、若いって、いいな。

ブロンコやGL400の、脂の抜けたパサパサの脚も
まあ、それはそれで趣があったけどね。

ボクはニヤニヤしていた。




「あたし、あなたの役に立つわよ」
「また、唐突に…」
「出張の途中に焼き付いたり、電装が切れたりしないわ」
「若いうちは、みんなそう言いますね」
「ランツァ伯母さんみたいにガソリンも食わないし」
「彼女、ホントによく食べるよね(笑)」
「オーストリア娘みたいにわがまま言わないわ」
「コースでもKTMと張り合う気かい?」
「場所によっては、アタシのトラクションがいいかもよ?」
「セルもあるしね…」
「モンゴルにも行きたいなー」
「北海道くらいで勘弁してくださいよ」
「じゃあ、ニュージーランド」
「船賃だけで、キミがもう1台買えちゃいますよ」


打ち解けてみると
なかなか楽しい子だ。
出自を鼻にかけない気さくさも好ましい。 

ボクらは気楽な会話を楽しみながら
高浜の街を流し
やがて、お店に帰ってきた。


「今日は楽しかったよ、ありがとう」
「……」
「?」
「ねえ…」
「ハイ?」
「本当に、このまま帰っちゃうの?」
「いや、だって…」

保育園に子供を迎えにいかないといけない時間だ。
ボクが所在なげな自分を誤摩化すように
表の通に止まったヤマト運輸のトラックのネコに視線を留めていると
やおら、彼女は口を開き

「アタシ今日
お持ち帰りされちゃってもいい気分なんだけどなあ…」


(意訳:自賠責もナンバーも付いてるんだけどなあ)

そう言って、ニコッと首を傾げた。

「!」

むずかしい小理屈は押しやって
男子の理性が崩れた瞬間だった。





そのまま、慌ただしくお会計を済ませ
ボクは彼女をクルマに乗せると
お店を立ち去った。



眠ったままのブロンコを置き去りにして……


by tachigoke400 | 2014-06-03 06:51 | WR250R | Comments(12)
Commented by フG at 2014-06-03 11:13 x
官能小説、面白かったです。長く感じませんでした。
Commented by Wなべ at 2014-06-03 18:39 x
こういうプロローグって 突如終わりが訪れる っていうストーリーに多いような・・・
Commented by ぐんそ at 2014-06-03 19:10 x
うーん。その手があったか!やっぱ、ワカイコですね。。。
Commented by S at 2014-06-03 22:20 x
その文才に憧れます。

#それにしても、なかなかの長編の力作ですね。
 中古とは言え、〇万円のバイクをポンっと買った理由の
 ハニマルちゃんへの説明ですか。(^^)
 自分のブログも休みの日に何かゴチャゴチャやってる意味の
 嫁さんへの説明という側面があります。(^^;
Commented by はっとり at 2014-06-03 22:56 x
バイクのインプレで、これだけエロスを出せるたちごけさんに驚きです♪

WR250Rが、どんなふうに、たちごけさん流にそまるか楽しみにしてます。
Commented by tachigoke400 at 2014-06-04 05:40
>フGさん
か…官能の部分なんて、ありました?!
Commented by tachigoke400 at 2014-06-04 05:41
>Wなべさん
またしても盗難に終わる…とか?
Commented by tachigoke400 at 2014-06-04 05:42
>ぐんそサン
若い子は、なんでもシャキシャキしてていいですね。
Commented by tachigoke400 at 2014-06-04 05:44
>Sさん
いえいえ。ハニマルは会社で昼休みに読んで
「アホか、コイツ…」
と、思ったそうですが、別にバイクを買ったことについては
どうのうこうのはないです。

ボクのブログは純粋な絵日記。自分の心象のスケッチです。
Commented by tachigoke400 at 2014-06-04 05:46
>はっとりサン
オザキ塾長なら、きっともっと深いインプレを披露してくれることと思います。
WR250Rは、あまりに完成度が高いので、カラーリングやグラフィック以外には弄る気ないです。
Commented by 塾長 at 2014-06-04 09:51 x
愚息の赤いレーサー、15時間でピストンリングとオイル交換とバルブクリアランスの点検、
30時間でピストンとリングとオイル交換とまたまたバルブクリアランスの点検。

かたやWRは数千キロでオイル交換。バルブクリアランスなんて変化なし。
メインテナンスサイクルを性能の一環とすれば、ありゃ世界一のエンジンに間違いなしでっせ。
コンペに使ってもそこそこだしさ。
欧州のメーカーは本当はあんなエンジンを造りたいのじゃないかなあ。
Commented by たちごけ at 2014-06-04 12:35 x
>塾長さま
そう!それ!僕がインプレで書きたかったこと!(本当か?)


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