2010年 03月 03日
たしか、最初に、その彼女を見たのは 今年のはじめ、冬らしい風の強い 砂埃の立つ日でした。 大きな河の傍だったように記憶しています。 一目見て、ゲルマン系の出身と分かる容姿 しかし どことなく、線が細い印象のときもあり もしかしたら、遠い昔、トルコやハンガリー、イタリア あるいは遥か、モンゴル高原の血さえ 混ざっているのかもしれない そんな風に感じさせる、複雑で魅力的な横顔。 しなやかに伸びた肢体と 自信に満ちた、意志の強そうな表情が印象的でした。 彼女は、その気高そうな気配とは対照的に いかにも、乱暴な感じのする、筋肉質な男性と一緒でした。 世の中には、こんな風な組み合わせもあるのだな と、そんなふうに思っただけで それきり、彼女のことは、日常の多忙のなかに紛れていました。 そんな彼女に再び会ったのは 10日ばかり前 2月というのに、妙に日差しが強い 風の強い日でした。 その日も、やはり、あの 鉈や斧を連想させる、あの、凶暴そうな男性と一緒でした。 しかし、僕の目を引きつけたのは 彼女の、異様に疲れきった様子でした。 どうしたんだろう。 大丈夫だろうか。 あの男に、ひどい扱いを受けているのだろうか。 余計なことかもしれないとは思いながら ボクは、男が席を外した時を見計らって 彼女に話しかけてみました。 学生のとき、少しだけ、ドイツ語を習ったことがあるので たどたどしいながらも、会話が成立しました。 「こんにちは」 「こんにちは」 「顔色がすぐれないようですが?」 「‥‥‥‥」 「相談に乗りますよ」 「‥‥私、もうすぐ、あの男に殺されるわ」 「まさか」 「本当よ。夏までは持たないって」 「そんな、どういうことですか」 そこまで言った時、男が帰ってきて やにわに、彼女に蹴りを食らわし どこかへ走り去ってしまいました。 取り残された僕は しばらくその場にボーっと佇んでいました。 やがて、大怪我をした彼女と ゴリラに似たあの男が帰ってきて 周囲は騒然となりました。 「ああ、もう、コイツとも終わりだな」 男が、吐き捨てるように言いました。 彼女は、ただ黙っているだけです。 いったい、何がどうなっているんだ? 僕は、ただ、見ていることしかできませんでした。 数日後 風の噂で、彼女が捨てられたらしいことを知りました。 治療にお金がかかりすぎるということです。 あの、乱暴な男は、別に、新しい娘を手に入れて 去っていってしまったそうです。 なんとなく、彼女を放っておけないと思った僕は お医者さんに、治療費は僕が払うから、と言って 彼女を身請けすることになってしまいました。 うちは決して裕福ではありませんが もう1人くらい、なんとかなると思ったからです。 え、何のことか、て? そりゃあ KTM250SX-F のことに決まってるじゃないですか。 子ゴリラみやぎ号です。 はるばる、オーストリアから こんな最果ての島国に売られてきて まだ、若いのに 持ち主を転々とし‥‥ こんな目に遭い もちろん、その他もろもろ ドクターナカジマが治してくれましたが‥ サイレンサーとエキパイは新品に。 偶然にも、トラ車のSYと同じく クロモリフレームのリンクレスサス という、似たような構成のマシンを2台持つことになります。 かねてより、CRFかRMZの どちらかに乗りたい と、願っていたのですが つまり 赤いのか、黄色いのがいい、と 強く願いすぎたあまり、神様が、勝手に混色して オレンジの娘を、僕に遣わした と、そういうふうに理解することにします。 いやー。 それにしても、ハニマル ありがとう。 大事に乗ります。 これで、夫婦ともに トランポ トライアラー トレール モトクロッサー を、各1台づつ所有することになり(CRM50は借り物なので) じつにバランスのいい家庭ということになります。 でも、乗る時間ないなー。
by tachigoke400
| 2010-03-03 00:03
| オフロードバイク
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